やさしい吸血鬼の殺し方 [毛ガニデパート] | DLsite 同人 – R18
あらすじ
歴史×吸血鬼×科学×医学
ストーリー性を追求したバイノーラル音声作品を作ってみたかった。
■プロローグ
1766年、ロンドン。
若き孤高の天才科学者ヘンリー・キャベンディッシュに、終焉の時が迫りつつあった。
動悸が止まない、脈拍は全身を打つように激しく、足元は波間に揺れる船のように不確かで、何かに掴まっていなければ立っている事すらままならなかった。
「人工空気に関する実験についての3つの論文」、王立協会での初の論文発表がもう明日だというのに。
このままでは、とてもその場に立てそうにない。
未完に終わるやも知れぬ発表に思いを巡らせる。
それは挑戦的な研究であった。
この研究は多くの称賛と批判とを巻き起こし、質問者は列をなし、『哲学会報』にも掲載され後世にまで知られるであろう。
彼に向けられる知識人達の数多の視線。
それを想像しただけで嘔吐しそうになったが、好物のマトンも今朝は喉を通らなかったのが幸いした。
もし吐いてしまっていたら、メイドを呼んで清掃を命じねばならなかったであろう。
メイドに会うという苦痛を回避できたのは、不幸中の幸いと言わねばなるまい。
ヘンリー・キャベンディッシュ、そう彼は良く言えば孤高であった。
端的に言ってしまえば、人付き合いというものが、とてもとても、とても苦手であった。
頼りない息子の姿を見慣れているはずの父も、さすがに見かねたようで彼に医者へ行くように促した。
曰く、「腕のたつ医者が居る。しかし、この件は他言無用だ」と。
そして、「もっとも、お前が人に話せるようなら苦労はしないのだが……」とため息混じりに口ごもった。
他にも何やら言っていたようだが、キャベンディッシュの優秀な頭脳は発表の恐怖を際限なく増大させる事に費やされており、耳に入らなかった。
この恐怖から解放してくれるならば何だっていい、彼は、藁にもすがる思いだった。
馭者に顔も合わせず、父が用意した馬車に乗り込んだ。
「キャベンディッシュ」、それは名家の中の名家、デヴォンシャー公爵家の家名である。
それに名を連ねる者が、医者を呼びつけず、自ら赴かねばならない理由とは一体何であろうか?
向かった先は、親類の別邸。
そして、彼は吸血鬼の少女と出会う。
■注意事項
※本作品はバイノーラル録音を使用しています。ヘッドフォンやイヤフォンでご視聴ください。
※作中に眠気を誘うような表現があります。眠ってしまっても安全な環境でお楽しみください。
※作中にて出血等の表現があります、苦手な方は視聴をご遠慮ください。
※視聴中に気分が悪くなるようでしたら、視聴をご中断ください。
※本作品の視聴によって生じた損害に関して、一切の責任を負いかねますので予めご了承ください。
※本作品は歴史を基にしたフィクションです。また、現在において一般的でない治療法や、否定された学説が登場します。
※特定の宗教・思想等を批判する意図はありません。
以上をご理解の上お楽しみください。
■トラック
01 プロローグ(3:00)
02 地下牢の吸血鬼(12:48)※バイノーラル録音
03 幕間1(3:47)
04 再会に薫る花(4:33) ※バイノーラル録音
05 幕間2(2:15)
06 懲りんとくらり問答(7:20)※バイノーラル録音
07 幕間3(2:53)
08 欠陥は循環して(4:07)※バイノーラル録音
09 幕間4(0:39)
10 やさしい吸血鬼の殺し方(0:39)※バイノーラル録音
11 エピローグ(2:22)
総再生時間:44分23秒
■同梱ファイル
・本編(wav・mp3)
・Readme
・あとがき
・台本
・解説(ダウンロード体験版に一部収録)
・シナリオ解説
■制作
CV・ナレーション:青柳るう 様
http://bleatbleat.wixsite.com/bleatbleat
シナリオ・編集:毛ガニ
https://twitter.com/kegani_depart
制作:毛ガニデパート
https://twitter.com/kegani_depart
サンプル
レビュー
とんでもなく安い価格とジャケットのNo imageを見て、訝しさを感じるのと同時に興味を惹かれ、試聴・購入しました。作品を聴き、添付されたテキストファイルを読み終わり、まず「これはすごい作品に出会ったぞ」と感じました。
リスナー側に明確な個性がないことが常の音声作品の中で、本作は歴史上の科学者「ヘンリー・キャベンディッシュ」の役割を与えられます。彼の名を聞いたことのない方もいると思われますが(私は初耳でした)、その人物像はナレーションなどで語られていきます。そして、本作に聴き入って世界観に没入していく中で、あたかも彼の人生を追体験するかのような感覚を覚えました。
彼は人付き合いに極度の苦痛を感じる科学者でした。彼が父親の紹介で医者―吸血鬼の少女と出会うことから物語は始まります。
この吸血鬼ちゃん、作中で名前が出ることも明らかな外見の描写もありません。キャベンディッシュ(=リスナー)と彼女の逢瀬は暗い地下牢の中であり、彼女の情報は声のみ。ですが、青柳るうさん演じる吸血鬼は、年代を感じさせる落ち着いた声色と少女の様な可愛さが醸し出されており、そのミステリアスな声に聴き入っているうちに、彼女に惹かれていくキャベンディッシュと自分がシンクロするように感じてゆきました。
二人の物語の終わりを初見ではうまく読み解くことが出来ませんでした。しかし同梱のテキストを読み、再び物語を味わったとき、二人の間にあった暖かな愛と美しい救済に大きく胸を打たれ、思わず涙がこぼれました。
本作は吸血鬼やキャベンディッシュを中心に設定・時代考証が深く反映されており、シナリオ担当さんの並々ならぬ熱意が伺えて本当に彼らの逢瀬があったかのようなリアリティを感じました。
ストーリー性重視をうたった本作は特異なシチュエーションながら強く胸に響き、出会えて本当に良かったと、幸せで胸が一杯になりました。 これはすごい作品と出会ったものです。
実在する人物をもとにしたフィクションで、時代考証や鍵となる文の訳など、
時間をかけて調べ、設定が練られています。
音声はナレーションの幕間と吸血鬼の少女との会話が交互にくる構成です。
ナレーションは場面の時代を隔絶すると同時に、当時の科学的発見について言及しています。
あとがきに書いてありますが、声に合わせてシナリオを書いた、というだけあって
声優さんのやわらかい声と吸血鬼の少女の寛容な雰囲気が合っていて違和感がないです。
1つ注意点としては瀉血するシーンがあり、催眠音声の手法で
流血をイメージすることになるので、苦手な人は気を付けてください。
もっと良さを伝えたいという衝動がありますが、
それを文にできなかったのでこの辺で終わりにしときます。 短編小説を読み終えたときのようなんとも言えない満足感を味わうことができました
声優さんの声質と話し方に惹かれて購入しましたが、聞いてる間は声を楽しむことができ、聞き終わったあとはそのストーリーの余韻を楽しめました 普段よく音声作品を聞いてもレビューや感想はほとんど書いてこなかったのですが、この作品については一言何か申さずにはいられないと思いレビューを書きました。
なんといってもこの作品の特徴は、紹介文で「脱テンプレート」「ストーリー重視」と謳うように非常に作り込まれた設定と物語です。「いや、音声作品に設定・物語は最低限あればよい、凝り過ぎればかえって視聴の妨げになる」、そんな風に今まで考えてきましたが、見事にこの一本で覆されました。
本作は、主人公である偏屈な科学者キャベンディッシュが、治療の為に地下牢に住む吸血鬼の少女の元を訪れる所から始まるのですが、序盤から作り込みが凄いです。舞台である18世紀の欧州の世界観や当時の科学技術などがこれでもかと所々に散りばめられていて自然と良い雰囲気の作品世界に入っていけます。
その一環で医療技術の瀉血が出てくるのですが、まさかそれを吸血鬼と絡めて安眠音声のギミックにしようとは。丁寧に時代考証を敷き詰めたが故に説得力のあるギミックで、こんな風に没入感を高める方法もあるのかと思わず膝を打ちました。
また、青柳るうさんの声も吸血鬼の少女に凄くハマっていて癒されます。瀉血という現代から見ると過去の遺物・や異様に見える行為の中、語りかける吸血鬼ちゃんの声は非常に優しく落ち着いて、だからこその優しさが際立ち、同時に時代に取り残される彼女の悲しみも分かるのです。
そして結末は非常に切なくて印象深いです。最後まで作品を取り巻く時代とふたりの触れ合いを丁寧に描いたからこそ重みのあるものとなっています。
本作は、良い映画を一本見ている時のような没入感と見終わった後のような余韻があって、音声作品でこんな体験が出来るとは思っていませんでした。流血描写などや人を選ぶ部分もありますが、音声作品の新たな可能性を感じさせる一本、こんな音声作品を待っていた。 天才科学者と吸血鬼の儚い関係を描いたボイスドラマです。
ヘンリーという天才科学者が、重要な論文を発表をする前に
吸血鬼の少女と出会い心を落ち着かせるところから物語は始まります。
吸血鬼がどのような容姿なのか、年齢は幾つなのかというのが
文中で明かされておらず、読者の想像に委ねられています。
ヘンリーの天才ぶりが、論文発表の奇行で表現されているところとか、個性の際立たせ方が秀逸だなと思いました。 この作品は安さの割に合わずとても考えられて作られています。つまり何が言いたいかというと、素晴らしい作品であるということです。
どれほど凝っているかはご購入して貰えればわかると思います。
ぜひご購入ください。