海岸I:海岸
サンプル
レビュー
ひたすら、綺麗な音に包まれます。
寄せては返す波の音。
その圧倒的な音の世界に、ぽつりと、語られる物語。
不思議な世界観で、時代も場所も、登場人物も、主人公の女性が感じた音も、すべてがほんのり明るい行燈のような、夢か現実か不確かな物語。
この作品は、手に取ったあなたが、行間を埋めるようにして、紡いでいくことのできる繭のような存在。
謂わば、絵コンテのような、ラフスケッチのような線が引かれている感覚。
どの線をメインに据えて描き加えていくかは、あなたに任されています。
何光年も掛かるさそり座の星。今はもしかしたら無くなっているのかもしれない。今耳にしている波の音は、太古の昔から繰り返されてきたもの、恐らく今後も続いていくだろう。
比して、人間の一生の儚さ。
語られている女性の小さい頃の思い出と、いま。様々な喜怒哀楽を繰り返してきた。女性にとっては、長い時間を感じる、昔とは様変わりしている今の世界。そんな時間も、宇宙の営みの中では、一瞬の出来事。
そんなことを感じさせる。
ただ、これらは自分の感じたものであって、あなたの物語ではない。
本作品は、圧倒的な波の音に包まれながらも、主人公である女性の物語を通して、体感することで、あなたの物語に。
感じ方は、千差万別。是非耳にしてあなたの物語を紡いで欲しい。
本作にて、彼女の言葉を話してくれる、声優の都みちさん。
波の音にそっと音を置いてくれるような語り口で、不思議な親和性がある。流石!
本編で、彼女の語りを味わうのもい。逆に、語りをBGMに、波の音を聴いてもい。
豊富なおまけの音声。こちらには、語りがないので、より睡眠導入向き。
自分も、本編で都みちさんの声を聴いて余韻に浸っている状態で、おまけの音声を聴いているうちに、寝落ちした。
聴き方は自由、是非手にとって体感して欲しい。