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秋野かえでさんの優しい語り口で朗読された物語。
小説と散文詩の間のあなたに語りかけるようなお話しをお楽しみください。
物語抜粋 -sample-
かつてこの国は栄えた。
奴隷によって栄えた。
私は幼いころからなんでもやった。
自分の身体と同じ大きさの丸太を運んだ。
自分の身体と同じ大きさの人間を運んだ。
ああ、痛いです。神様。痛いのです。
身体の痛みや飢えは慣れました。
私は心が痛いのです。
ここでは死ぬのが普通で、生きている事が奇蹟なのです。
ああ神様どうして私を生かすのですか。
苦しいです。辛いです。
私もベッドというもので寝てみたいです。
それでも、私はあなた様の御子であり。
それでも、あなた様を信じております。
いつか天上というところへ行った時に私は救われるのでしょう。
――毎晩毎晩、私は詩を歌う。
アメイジンググレイス
ああ、なんという甘美たる響きか。
アメイジンググレイス
ああ、なんと大いなる人々の流動か。
私のように悲惨な者を救ってくだされよ。
今はまだ盲目であろう人々もいずれ目を覚ますだろう。
私たちの祈りの束が積みあがる時に
人々には見えるだろう。
――毎晩毎晩、人々の苦しみを分かちあって。歌う。
アメイジンググレイス
神の恵みが私の心に恐れるな、受け入れよと教える。
そして、これから起こるであろう天上の恵みを想い
恐れから私を苦しみから解放した。
私達の子孫にどうかこれ以上酷い目にあっては欲しくないのです。
――毎晩毎晩、歌うほどにおなかが空く。
アメイジンググレイス
これからどれほどの素晴らしい未来があるか。
私が信じるように。
どうか。神様。
ああ、多くの危険と苦しみと誘惑を乗り越え。
幾千幾万の夜を乗り越え、私はすでに辿り着いた。
この恵みが、ここまで私を無事に導いてくださった。
その恵みが私をホントウの家に導くだろう。
――いよいよ、僅かなんだと。いよいよなんだと。思う。
アメイジンググレイス
神の御言葉は私の希望の保障である。
彼は私の盾と分け前になってくださる。
私の命が続く限りに。
私の命が続く限りに。
そうです。
この体と心が滅び、
私の死ぬべき命が終わる時。
私は、来世で得るものがあります。
来世で得るものがあるのでしょう。
――ああ、アメイジンググレイス
それは、喜びと平和の命です。
地上はまもなく雪のように白くなり、
太陽は光を失うだろう。